06/06/2026
誰も気づかないかもしれない1ミリの地層のために、僕は今日も命を削って狂気のリコッタを掬う
先に言っておきます。
今回のチーズ話、たぶん食べても「違いがよくわからん」って言われる確率が9割です。もう身内からも言われてます。10人中9人が「おいしい普通のコッタ」と言うかもしれない。
だけど聞いてほしい。
僕は今、スケジュールという名の防波堤を自らの手で爆破し、完全に無理やりな製造ラインをねじ込んで、白目を剥きながらある特別なリコッタチーズを作っています。
その名も「リコッタ・ミスタ」。ミスタ、つまり、混ぜちゃったリコッタです。
イタリアと違い日本では普通、リコッタっていうのは一つのミルクで潔く作るもんなんです。
なのに、うちの工房では今、とんでもないアベンジャーズみたいなことになっています。
まず、広島の三良坂フロマージュの松原さんが、それはそれは大切に、自然放牧で絞り出してくれた最高に心地よい山羊のミルク。
そこに、蒜山の大自然でのんびり育ったジャージー牛たちの、濃厚で甘やかなミルク。
これだけでも「もう合格! 優勝!」って感じなのに、私はさらに、吉備中央町のノリランカ農園さんちの濃厚な羊のミルクを、本当に、本当に「ほんのちょっとだけ」注ぎ込む。
もうね、配合のこだわりが細かすぎて、やってる最中は完全に不審な魔術師です。
なんでそんな面倒なことをするのか。
この3つのミルクが良いブレンドで噛み合ったとき、飲み込んだその喉の奥に、ほんの、ほーーーんの少しだけ、野生っぽい、草っぽいような香りが「……っ!」って残るんです。香りの地層が何層にも重なって、味の底に、底なし沼のような奥行きが生まれる。
「そんなん、誰も気づかんて」
脳内の合理的な私がそう囁き�